【豆知識】
火山は地下にある
マグマから出てくるものであるから,マグマと地表とをつなぐ通路があるはずであり,普通はパイプ状のものをイメージしており,
火道と呼んでいる.ところが,現世の火山体では,隆起運動などがあってよほど削剥がすすまないと火山体の中心部を直接観察することはできず,火道をみることができない.古い火山体では噴出物がすべて削られてしまい,火道を満たしていた硬い溶岩だけが残されるようなこともあり,そうした尖塔状のものは
岩頚と呼ばれる.
濃飛流紋岩は中生代の白亜紀末期の火山活動で形成された岩体であり,時代が古いことから浸食が進み,火道がみられてもおかしくないはずである.ところが,その主体をなす
溶結凝灰岩が厚い層をなして積み重なっているために,それらの出口にあたる火道部分はほとんど見ることができない.それでも,小規模な活動にともなう火道は岩体内の数ヶ所で見ることができ,火口の一部をのぞくことができる.そのなかで最もよく知られている火道は,金山町田島の飛騨川河床に約1.3kmにわたり露出している
田島火道角礫岩である.この角礫岩は,径3m以上の巨大なものから数mm以下の細かいものまで,さまざまの大きさの礫からなり,比較的大きい礫はほとんど
濃飛流紋岩の溶結凝灰岩,小さい礫は
美濃帯堆積岩類のチートや砂岩などからなる.これらの礫の間を埋める細粒物質は
流紋岩質の凝灰岩であり,
噴煙が噴き上げられる時に火道周辺にあった岩石をいっしょに巻き込み,大小さまざまな礫として火山灰とともに火道を埋めたものである.火山灰の粉が勢いよく礫の間を通過する際に礫の周囲が摩耗されたり,礫の中に脈状に入りこんでいく様子も観察でき,全体として大きい礫は垂直方向に並ぶ傾向をもつ.この角礫岩は,角礫を多量に含んだ
火砕流として地表へ流れ出ており,火道角礫岩の分布域周辺に限って凝灰角礫岩層として分布している.