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断層[10] 関ヶ原断層
~首根っこをおさえる~

 
 
  
【豆知識】
関ヶ原断層は,滋賀県境の伊吹山南麓にそって垂井町南部から西北西–東南東方向に関ヶ原町の北側山麓を横切り,滋賀県の木ノ本町付近に至る全長約30kmほど続く活断層であり,何本かの断層の複合断層である.各所に断層崖や谷の屈曲などをともない,活動度の比較的高い活断層にランクされている.全体として水平左ずれ断層をなし,延長方向が似ている根尾谷断層と同じである.この東端から南南東へ向かって養老‐伊勢湾断層が,西端から北北西へ向かって柳ヶ瀬断層がいずれも活断層として延びる.

この活断層は,東海道新幹線,東海道本線,名神高速道,国道21号線という日本における重要な交通大動脈が集中する場所に,それらを斜めに横切ったり,すぐ近傍を通っている点で注目される.仮に,この断層が何らかの動きをしたとするなら,たちまち日本中のいろいろな部門で瀕死の状態に陥るはずである.いわば“首根っこをおさえた”活断層ということが言える.考えてみると,伊吹山系から鈴鹿山地へ南北に連なる山塊に関ヶ原という低地の風穴をあけてくれたのはこの断層であり,人間はそこを巧みに利用して交通施設を敷設したのであるから,分かっていながら仕方なしにリスクを背負っていかざるを得ないと考えるべきであろう.山間部の多い日本では断層 (ほとんどは活断層) に規制されて作られた低地を巧みに利用して交通路を確保しているケースがかなり多い.岐阜県内も例外でない.活断層の走る谷をそれと並走している国道,高速道路,鉄道をあげればかなりの数になる.いずれもそれを避けて敷設するような余裕はない.大切なことはそれを知っているか否かである.

【関連項目】 断層[4] 岐阜県の活断層
断層[5] 水平ずれ活断層

【キーワード】 活断層,交通施設,水平左ずれ断層,関ヶ原,関ヶ原断層,柳ヶ瀬断層,養老‐伊勢湾断層

【関連文献】
杉山雄一・粟田泰夫・吉岡敏和 (1994) 柳ヶ瀬‐養老断層系ストリップマップ.地質調査所.

【余談】
重要な施設に航空機を飛び込ませるようなことが起こる時代である.それは人間の仕業であるが,自然が起こす“テロ行為”を忘れてはならない.新幹線でも名神高速道でもよいが,関ヶ原を通過するたびに「動かないでくれ! 」と念じるのも,冗談ではなく必要なことかもしれない.

『学習テーマ』
小学6年「土地のつくりと変化 (地震) ―断層
中学1年「大地の変化 (地震) ―断層


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