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岩石・鉱物[5] 飛騨片麻岩類
~日本の基盤~

 
 
  
【豆知識】

岐阜県北部から富山県南部へかけての地域には,日本列島のなかでも最も古い時代に形成された変成岩類が分布する.それらをまとめて飛騨片麻岩類と呼び,それらが分布する地域を飛騨帯と呼ぶ.片麻岩という岩石は,変成岩の中でもとくに強い広域変成作用を受けた場合にできる岩石であり,粗粒の黒色系をなす鉱物と白色系をなす鉱物の縞状組織をもつ岩石の総称である.飛騨帯は富山県東部から岐阜県,石川県,福井県を経て,島根県隠岐にいたる約400km,幅約100kmの範囲に広がる.ただし,これらの地域全体に露出しているわけではなく,ほとんどは後の時代に形成された火成岩類に貫かれたり,堆積岩類に覆われたりして,実際にはきわめて限られた地域に点在するだけである.それらの中でも岐阜県北部地域は比較的広い分布を示す地域にあたっている.
飛騨片麻岩類の形成過程はきわめて複雑である.強い変成作用のためにそれらの源岩にあたる岩石はほとんどわからず,その具体的な岩石名は特定できないが,おもに泥質~砂質岩,中性~塩基性岩,石灰質~石灰珪質岩などである.それらが堆積した後,約20億年前,約18億~16億年前,約6億年前,約4億年前など,何回にもわたり変成作用や深成作用を受けて,全体としていろいろな種類の片麻岩類が形成された.ところが,約1億8000万年前に広い範囲にわたって船津花崗岩が貫入にしたことで,片麻岩類が広く接触変成作用を受け,同時に広範囲に強い変形作用も受けた.このため飛騨片麻岩類の年代値や岩石の特徴の多くはこの時期に受けた最後の変形・変成作用を示すようになっている.このように複雑な歴史をもつ岩石であるために,まだ謎のまま残されていることが多い.

【関連項目】 岩石・鉱物[1] 日本最古の岩石

【キーワード】 接触変成作用,飛騨帯,飛騨片麻岩類,船津花崗岩,片麻岩

【関連文献】
Suwa,K.(1990) Hida‐Oki Terrane. Ichikawa.K.(ed.) Pre‐Cretaceous Terrane of Japan, 13–24.
山下 昇・粕野義雄・糸魚川淳二編 (1988) 日本の地質5「中部地方Ⅱ」.共立出版,310P.

【余談】
日本列島の始まりを20億年ほど前に置くと,上麻生礫岩の名にはじまり,その後の日本列島の基盤としての飛騨片麻岩や船津花崗岩,そして日本最古の化石産地の福地と,いずれも岐阜県に因んだ名称が並ぶ.ナショナリズムの高揚には最適の材料ばかりであるが,岐阜県という行政区分はたかだか130年ほど前に人間の世界で勝手に作られたものにすぎない.

『学習テーマ』
日本列島の形成


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