地震と断層

地震と断層の関係断層の種類活断層地震予知 (付録)
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地震と断層の関係

共役断層
岩石の円柱に圧縮力を加えた場合に生じる割れ目の形態
[藤田(1985)による]

左の写真と図は,岩石の円柱に両側から力を加え続けた場合にできるる割れ目のようすを示したものです.この割れ目は大きく2つの方向にわかれており,円柱内部では破断面 ( = ずれる面) を作っています.円柱を大地に見立ててやると,その破断面が断層にあたります.
この円柱が壊れる時には音がでます.それは,壊れた時に発生した振動が空気を振るわせて,それが音として耳に伝わるからです.この場合には壊れた時の振動を直接に感じることはできませんが,大地の場合にはそれを地震として体に感じています
人間もいろいろな方法で“ストレス解消”をしていますが,大地は断層を作って“ストレス解消”をしています.その時に出した“叫び声”が地震と考えればよいでしょう.「土地の変化」としてみると,単なるシグナルにすぎない地震ではなく,大地を変化させた断層のすがたを理解することが重要になります.『根尾谷断層』は濃尾地震によって形成されたのではなく,『根尾谷断層』が形成された時の振動が濃尾地震にすぎないのです.
[文献]
藤田和夫(1985) 変動する日本列島. 岩波新書,228P.

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断層の種類

断層模式図
断層の模式図

水平ずれ断層
右横ずれ断層と左横ずれ断層

垂直ずれ断層
正断層と逆断層

大地の破断面にあたる平面を断層面といいます.大地に働く力は地表付近よりも地下の方で強いため,大部分の断層面は地下で形成されると考えられます.それが地表にまで達すると,地表では断層線として表わされます.
断層面がずれる量のうち,水平ずれ成分が垂直ずれ成分よりも大きい場合を水平ずれ (横ずれ) 断層,逆の場合を垂直ずれ (縦ずれ) 断層といいます.水平ずれ断層のうち,断層線の反対側が左にずれている場合は左ずれ断層,右にずれている場合は右ずれ断層と呼び,垂直ずれ断層のうち,断層面の上側 (上盤) が下がっている場合は正断層,上がっている場合は正逆断層と呼びます.
地表でみられる断層には,過去に地下で形成されたものがその後の地殻運動で地表までもたらされたものもあります.ずれ方が大きいために断層面が地表にまで達したものもあります.いずれも大地を変化させたものですが,「土地の変化」としては,目の前にある大地が断層により直接ずれることで変化する様子をイメージしていますから,地表にまで達した断層に注目する必要があります.それが活断層です.

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活断層


地質年代区分表
×100万年
新生代第四紀 1.7
第三紀新第三紀 
古第三紀65
中生代白亜紀 
ジュラ紀
三畳紀245
古生代ペルム紀 
石炭紀
デボン紀
シルル紀
オルドビス紀
カンブリア紀570
先カンブリア時代原生代 
太古代
冥王代4,550
  

1. 活断層と地震断層

断層のなかで,約170万年前から現在までの第四紀と呼ばれる時代に形成され,しかも地表にまで達したものを活断層と呼びます.活断層の“活”はいま現在動いているという意味ではなく,あくまでも第四紀という最近 [注] に動いたことを意味しています.ただし,時間が経つほどその痕跡が消されやすくなりますから,実質的には第四紀の後期 (約70万年前以降) に形成された地層や地形面をずらしている断層に限られると考えてよいでしょう.
第四紀の後期には,人間が記録を残せるようになったごく最近も含まれます.この時期に大地震をともなって地表に現れた断層を特別に地震断層と呼びます.
[注]   地球の年齢約46億年を1年間365日に縮めると,最後の約170万年は大晦日の午後9時ごろ以降<--「以降」挿入-->にあたります.1年のうちであと3時間ほどで現在に至る時ですから,「最近」という言い方になります.

水平ずれ活断層地形
水平ずれ活断層地形の諸例
[松田ほか(1977)による]
A:断層鞍部,B:三角末端面,C:低断層崖,D:断層池,E:ふくらみ,G:地溝,H:横ずれ屈曲谷,I:閉塞丘,J:載頭谷,K:風隙,L–L′:山麓線のくいちがい,M–M′:段丘崖のくいちがい,Q:堰き止め性断層池

垂直ずれ活断層地形
垂直ずれ活断層地形の諸例
[松田ほか(1977)による]
A:撓曲崖,B:三角末端面,C:低断層崖

2. 活断層の認定

活断層は地形に残された痕跡をたよりに認定されます.それらは差別浸食地形と変位地形にわけられます.
地表の断層線沿いは,周囲にくらべて破壊されて弱くなっていますから,選択的に削られやすくなっています.すなわち,差別的に浸食されてできる谷地形,鞍部地形,斜面の傾斜変換線 (傾斜変換部) などが線状に配列することで断層線の存在が示唆されます.こうした線状配列はリニアメントと呼ばれ,水平ずれ断層でも垂直ずれ断層でも形成されます.
これに対して,水平ずれ断層で形成される河谷や尾根の屈曲,垂直ずれ断層で形成される段差などは,断層がずれる (変位する) ことによって形成される地形です.ずれ方により異なる地形として現れますが,いずれも時間が経つとともに崩されていきますから,実際にはそれらが累積されないと地形として残りにくくなります.
こうした地形の認定は,縮尺の大きな地形図上で行ないますが,なるべく広範囲にみる必要があるために,空中写真を用いた地形判読も有効な方法となります.

活断層の確実度
[松田ほか(1977)による]
確実度Ⅰ (活断層であることが確実なもの)
断層の位置やずれの向きが明確で,次のいずれかの特徴を備えているもの
1)数本以上にわたる尾根や谷の系統的な横ずれ
2)一続きであることが確かな地形面を切る崖線
3)異なる時代の地形面群を切る崖線があり,古い地形面ほどずれが大きい
4)同一地形面の変形
5)第四紀層をずらしている
確実度Ⅱ (活断層であると推定されるもの)
断層の位置やずれの向きが推定できるが,確実度Ⅰだと判定できる決定的な資料がないもの
確実度Ⅲ (活断層の可能性があるもの)
ずれの向きが不明または,原因を問わないリニアメントがみられるもの
活断層の活動度
[松田ほか(1977)による]
A級: 1 m以上
B級: 1 m~10cm
C級: 10 cm以下

3. 活断層の確実度と活動度

時間が経つとともに断層地形が不明瞭になっていくことに加えて,それを読み取る際の個人差もありますから,実際の活断層の認定には常に不確かさが付きまといます.そのため,活断層の確実さを3段階 (Ⅰ~Ⅲ) にわけています.地形として残りやすい ( = 認定しやすい) ことは,断層の動く頻度が高いことも反映していますから,確実度が高いことは活動度が高いことにもつながります.
活動度は,活断層が過去にどれほどの頻度で動いてきたかを1000年あたりの平均移動距離として3段階 (A~C) で表わしています.この移動量は,活断層の断層面に接する岩石や地層の形成年代がわからないと求められません.形成年代値を得る機会は断層の露出面積を広げることで増え,それは断層の状態を詳しく観察できることにもなりますから,活断層が通過している場所に調査溝 (トレンチ) を掘り,掘削面から情報を得る調査 (トレンチ法) がなされます.ただし,この方法は,適切な掘削地点を得にくかったり,多大な経費と労力を要するために,多数の地点では実施できません.

岐阜県活断層図
岐阜県内に分布するおもな活断層
[活断層研究会(1991)にもとづき,小井土・佐々木(1995)が作成]

4. 岐阜県の活断層 

中部地方は日本列島のなかでも活断層の分布密度がかなり高い地域にあたっており,岐阜県内にも確実度・活動度の高い活断層が左図のようにかなり多く分布しています.これらのうち,活動度の高いA級活断層は次の4系統です.
牛首・跡津川断層系
阿寺断層系
根尾谷断層系
関ヶ原断層系
これらはいずれも水平ずれ断層であり,北東~南西方向に延びる①が右ずれ断層,北西~南東方向に延びる②③④が左ずれ断層という共通した特徴をもちます.これらのことは,現在の中部地方全体に東西方向に大きな圧縮力が働いていることを意味しています.
[文献]
活断層研究会(1991) 新編 日本の活断層—分布図と資料—. 東京大学出版会,437P.
小井土由光・佐々木嘉三(1995) 岐阜県の活断層—活断層図と解説—. 岐阜県,20P.
松田時彦・太田陽子・岡田篤正・清水文健・東郷正美(1977) 空中写真による活断層の認定と実例. 地震研究所彙報,52,461–496.

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地震予知 (付録)

「土地の変化」には直接関係しませんが,地震予知は多くの人にとって関心の高い問題です.ここでは災害との関係で活断層にかかわる地震予知の問題に限って触れておきます.

1. 活断層と地震予知

活断層は,最近において大地に働いている力によって蓄積された歪みが解放されることで形成されたものです.その力は現在も近い将来も同じよに働いていると考えてよいはずですから,今後も歪みが蓄積していき,再び同じように解放される ( = 動く) 可能性が高いことになります.ここに活断層の認定や活動度が地震予知との関連で注目される理由があります.

2. 活断層の意味

日常的に感じている小さな地震は,地下にある断層面がずれることで起こっています.被害をもたらすような地震でも,断層面が必ず地表に達するわけではありません.地表で確認できる活断層は,最近の断層活動 ( = 地震活動) のうち特に大きなものだけを表わしていることになります.したがって,活断層の存在は今後に大きな地震が起こる可能性を示していますが,それが大地の状態をすべて表わしているわけではありません.

地震予知
大地に蓄積されていく歪み量と活断層運動 ( = 地震発生) との関係を示す模式図

3. 活断層の活動周期 ( = 地震の発生周期)

大地の歪みが解放されると,蓄積されるまでには一定の期間が必要となります.それが活動周期です.日本において,最後に動いた時期と活動周期のどちらも明確になっている活断層はありません.最後に動いた時期と場所が厳密にわかっている活断層で最も古いものは1891年の濃尾地震を起こした『根尾谷断層』です.その活動周期は平均値として得られる3000~5000年という値であり,実質的には活動周期は不確定であるといえます.

4. 地震予知とその限界

一般に,地震予知で求められる情報は場所・規模・時間です.多くの直下型地震では,活断層に沿う地域でその長さに応じた規模の地震が起こるとされています.ただし,活断層のすべてが把握できているわけではありませんから,場所と規模についての予知はおおよその目安として可能であるといえます.
大きな問題は時間です.活断層の活動周期を苦労して求めようとしている理由もここにあります.現状では,特定の活断層に限って活動周期の平均的な値が求まっているだけです.さらには,地表には現れなかった断層の存在も考慮に入れると,実際に被害を及ぼすような大きな地震が起こる時期を予知することは,特定の活断層についてだけ目安として可能ということになりますが,それも厳密な時期の特定はできないといわざるを得ないのが実状です.