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岩石・鉱物[12] さざれ石
~天然コンクリート~

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【豆知識】

滋賀県境にそびえる伊吹山 (標高1337m) は,頂上近くまでドライブウェーが通じ,自動車で登れる山として知られている.この山は美濃帯堆積岩類でつくられ,頂上付近から西側斜面にかけては石灰岩が広く分布している.この石灰岩は大垣市の金生山と同じように古生代ペルム紀の中・後期に形成されたもので,フズリナやウミユリなどの化石をたくさん含む.この石灰岩の下位には玄武岩質の火山岩類が分布しており,ちょうど現在の太平洋で見られるような海底火山を土台にしたサンゴ礁の組合せとそっくりである.ここの石灰岩は,山体斜面に石灰岩地帯特有の浸食地形を作り出しているほかに,植生にもかなりの影響を及ぼし,伊吹山の特有種がみられる.さらには,山麓に石灰岩の瓦礫を供給して,県の天然記念物に指定されている“奇岩”さざれ石をつくっている.
さざれ石は大小の石灰岩の角礫が集まったもので,石灰質角礫岩と呼ばれる岩石である.雨水などに溶け出した石灰分が沈着して礫の間をつなぐセメント役を果たしてできた岩石である.この産地である春日村笹又は伊吹山の東斜面にあたり,そこを崩れ落ちてきた石灰岩の礫が積み重なり,比較的降雨の多い地域であることも関係して,水に溶け出した石灰分が沈着することで天然のコンクリートのような岩石をつくりあげたものである.さざれ石は石灰岩という特殊な成分をもつ岩石が原因で形成されたものであり,鍾乳洞にみられる現象に通じるところがあるが,地表で起こった点が鍾乳洞とは異なり,バラバラにされた瓦礫を自らを溶かした糊でくっつけ直している点もいささか異なる.

【関連項目】 化石[3] シカマイア
岩石・鉱物[7] 美濃帯堆積岩類
景勝地[10] 郡上の鍾乳洞

【キーワード】 伊吹山,さざれ石,石灰岩,石灰質角礫岩,天然記念物,美濃帯堆積岩類

【関連文献】
山本博文 (1985) 根尾南部地域および伊吹山地域の美濃帯中・古生層.地質学雑誌,91,353–369.

【余談】
さざれ石は,石灰岩のガラクタを寄せ集めて自然界がくっつけた石にすぎない.平安時代の都人が春日村の山奥で出会ったガラクタになぜか感激して詠んだ歌が古今集に採りいれられた.ここまではややこしくなかったが,その後がどうも一人歩きを始めたらしく,ややこしくなったようである.自然界にもややこしいことはあるが,人間界ほど勝手なことはしない.

『学習テーマ』
中学1年「大地の変化 (地層と大地の歴史) ―風化


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