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災害[8] 帰雲山大崩壊
~岩のなだれ~

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【豆知識】

急傾斜地にある不安定な岩盤や土砂は何らかのきっかけでがけ崩れを起こす.その砕屑物が水を含んで斜面を流れるように崩れていくと土石流あるいは泥流と呼ばれ,水の代わりに空気を混ぜたものが崩れいくと岩屑なだれあるいは岩屑流と呼ばれる.その場合,空気はクッションとして地面との間の摩擦を減らし,同時に流動化作用を起こして固体の集団でありながら気体のように流れる.そのためかなり長距離にわたり砕屑物を移動させることができる.こうした現象は火砕流のようにガスをともなう火山活動で起こりやすいが,条件が整えば単なるがけ崩れでも起こる.
1586年 (天正13年) に飛騨地方で起こった地震は,庄川流域で被害が大きかったことから庄川ぞいに走る御母衣断層が動いたことにより発生したとされている.マグニチュード7.8 と推定されているこの大地震により白川村保木脇にある帰雲山の山頂近くが崩れて,約4500m³と見積もられる大量の土砂が岩屑なだれとなって流れ下ったとされている.しかし,崩壊の時期やきっかけを正確に決めることはむずかしい.とりわけ保木脇付近にあったとされている帰雲城が崩壊物に一瞬のうちに呑み込まれたとされる伝聞が話を誇張している可能性もある.崩壊地から庄川の河床までは急傾斜の谷があり,そこを大量の土砂が岩屑なだれとして一気に流れ下り,それが狭い庄川の谷を越えて対岸の山へも乗り上げることは容易に想像できる.しかし,帰雲山周辺には御母衣断層が走り,跡津川断層の末端付近にあって全体が脆く破砕されている地質の場であり,そこに急傾斜地が加われば,大小おりまぜて頻繁に岩屑なだれが起こると考える方が自然である.そのうちの一つが強調・誇張されたのであろう.

【関連項目】 災害[2] 岐阜県の土砂崩れ

【キーワード】 跡津川断層,がけ崩れ,岩屑なだれ,岩屑流,帰雲山,帰雲城,御母衣断層,流動化作用

【関連文献】
井嶋伸治・溝口秀勝・粕野義夫 (1984) 岐阜県白川谷の断層と保木脇の崩壊堆積物.石川県白山自然保護センター研究報告,11号,1–18.

【余談】
帰雲城の伝聞は埋蔵金のからんだ話である.人間の欲が絡むと話は膨らむ.帰雲城があったのか,あったとしてもどのような建物であったのかは知らない.実際には小屋のような建物でも“城”といってしまう例はたくさんあり,いつのまにか立派な天守閣をもった城をイメージしていることがよくある.言葉の一人歩きである.それを逆手にとったのが墨俣町の一夜城であろう.

『学習テーマ』
災害 (土砂災害)


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