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景勝地[9] 夜叉ヶ池
~硬い稜線にできた池~

 
 
  
【豆知識】

福井県境の標高1100mの尾根上にある夜叉ヶ池は,古くから雨乞い伝説で知られた池であり,分水界という特異な位置にありながら,円形の形状をして,水の枯れたことがないことが注目され,かなり深い池で,涌き水があるといったいくつかの伝承が生まれた.しかし,この池を実際に調査してみると,直径約80mの楕円形で,最深部で約7.7mの滑らかな底面をもつお椀型をなしており,涌き水ではなく,すべて溜まり水であることが明らかにされた.
標高の高い稜線付近という立地条件はこの池の成因を考える上でのキーポイントであるが,明確に確定した説明がなされているわけではない.断層にそって発生した地すべり地塊が堤防にあたるものを作って池が生まれたとする考えや,この付近全体が上昇地塊としてもちあげられ,その前の低地であった頃に存在していた旧水路の凹地が堰きとめられて池ができたとする考えなど,いろいろ唱えられている.いずれにしても,この池の集水域すべてが硬固なチャートでできていることが池の水の確保に有効に働いていることは間違いない.このチャートは岐阜市の金華山と同じ美濃帯堆積岩類を構成するチャートであり,ちなみに,夜叉ヶ池>への登山道に立ちふさがる夜叉壁と呼ばれる巨大な壁はチャートの岩壁であり,同じ福井県境にある冠山 (標高1257m) も,その名をもたらした突き出た山稜が周囲に比べて硬いチャートからできている.

【関連項目】 岩石・鉱物[7] 美濃帯堆積岩類
地形[5] 金華山

【キーワード】 冠山,分水界,チャート,美濃帯堆積岩類,夜叉ヶ池,夜叉壁

【関連文献】
梶田澄雄 (1967) 夜叉ヶ池―その性状と成因―.岐阜大学教育学部研究報告 (自然科学) ,4, 157–163.

【余談】
地質調査などで尾根を歩く場合はかなり注意を要する.1/5000といったかなり詳細な地形図を頼りに歩いても,わずかな高低差で位置を誤ることがある.見通しのきかない尾根ではとんでもないところへ行ってしまうこともある.谷の中を歩く時にはそれほど大きな誤認はないが,尾根を歩く時はかなり神経を使う.同じ地形図上でも谷と尾根では精度が異なるのではないかと思うことがある.

『学習テーマ』


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