【豆知識】
川はいくつもの支流を合流させながら下流へ流れていく.逆に川の上流へさかのぼっていく場合に,合流点において本流と支流はどのように決められるのであろうか.合流点より上流側の距離が長い方か,合流点での河床面の低い方が本流と決められている.距離の方はわかりやすいと思うが,河床面の高さはわかりにくいかもしれない.例えば合流点で滝となって落ちている方は河床面が高いので支流と考えるのである.必ずしも源流部の標高の高い方が本流とはならないことに注意する必要がある.例えば,日本一の長大河川である信濃川は3000m級の標高をもつ
北アルプスからも流れ出ているが,そこは決して最上流部ではない.最上流部はまったく別の関東山地の甲武信ヶ岳である.
このように決めていくとしても,最上流部までいくと最後の最後まで厳密に決められるような例は少なく,実際に谷の源流部へいくと川そのものが消滅してしまっていることが多い.そうした場合はさておき,それなりの水量をもって流れていてもどちらを本流とするか判断しづらい例が長良川である.長良川の本流は,下流から高鷲村西洞までは順調に支流との区別ができていくが,ここで大きく2つに分かれる.1つはそのまま北上して夫婦滝を経て,大日ヶ岳 (標高1709m) 北西斜面へ向かう谷,もう1つは東方の見当山 (標高1352m) へ向かう谷である.合流点での河床面の高さに差はなく,そこから源流部までの距離もほぼ同じである.源流をどこまで決められるかにより距離のとり方も変るので,あまり厳密なことは言えないが,どちらを本流にしてもおかしくない川なのである.ちなみに国土交通省は前者を本流としている.なお,分水嶺の北側にある蛭ヶ野高原は庄川水系の源流部の一つになっており,大日ヶ岳・烏帽子岳火山岩類が形成された後にできた窪地に土砂が堆積してできた湿原で,春先に開花するミズバショウは有名である.湿原の下には厚さ約3mの泥炭層が形成され,その中に含まれる花粉化石により約7000年前からの気候変化が読み取られている.