岐阜の地学  地形  馬瀬川  長良川最上流部

地形[8] 長良川
~水が止められることのなかった川~

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【豆知識】

長良川は本流にダムのない川として有名であった.四国の四万十川も本流にダムのない川であり,長良川は「本州で唯一ダムのなかった川」というのが正しい言い方のようである.それにしてもダムのない川は貴重であり,いろいろな意味で自然のままに水が流れる川を目の当たりにできることは誇りにしたかった.
川にダムが設置される理由にはいろいろな側面があるため,長良川にダムがなかった理由を簡単に求めることはできない.自然立地条件だけからみると,設置できるような地形をもった場所が上流部までほとんどないためである.飛騨川流域における飛水峡(ひすいきょう)中山七里(なかやましちり)のような比較的長い距離にわたる峡谷が長良川にはない.流域を構成する地質も関係しているが,全体として隆起運動の緩やかな地域にあたり,谷幅が広く,緩やかな地形を形成しているためにできないと考えてよい.
だが,川の水を堰堤で止めて貯えるだけがダムではない.森林も立派なダムの役割を果たしていることはよく知られている.さらには,平野部で川幅を広げて河川断面積を広くとり,多量の水を下流へ流せるようにしても実質的に川の水を貯えることになり,立派なダムの役割を果たす.長良川扇状地の上でみられる広い河川敷はまさしく平野におけるダムであり,扇状地の上で天井川をなす長良川が洪水で溢れると岐阜市街地に多大な被害を及ぼすために,河川敷というダムを設置してあるのである.長良橋付近では,堤防の位置を下げてまで川幅を広くとる工夫がなされている.長良川には立派なダムがあり,人為的に水が一度も止められることのなかった川というべきであろう.長良川に関してすべて過去形で書かなければならなくなったことが残念でならない.

【関連項目】 地形[11] 長良川扇状地

【キーワード】 河川敷,河川断面積,峡谷,森林,ダム,天井川,長良川,長良川扇状地

【関連文献】
岐阜大学長良川研究会編 (1979) 長良川 (三共科学選書9) ,三共出版,244P.

【余談】
森林が立派なダムの役割を果たしているから,山間部における河川にはすべて“ダム”がある.しかし,実質的にそれがなくなってきたことが深刻である.一方で,ダム堰堤が大量の土砂を堆積させ,河川としての機能を著しく低下させている河川もある.それも深刻である.川筋だけではなく,広い意味での河川がバランスを保てるようなかかわりが求められている.

『学習テーマ』
小学5年「流水による土地の変化―川の働き
小学6年「土地のつくりと変化 (地層と大地の歴史) ―河川


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