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地形[11] 長良川扇状地
~県都はつつましく~

 
  
【豆知識】

河川が平野に流れ込むと,流速が落ちることで運んできた土砂のうち,粗いものほど支えきれなくなって川底に落ちていく.比較的粗い土砂が最初に堆積して扇状地が形成され,それより下流側では勾配がさらに緩やかになるために蛇行をはじめる.そうすると流速の違いに応じて粗いもの (小礫や砂) と細かいもの (泥) が異なる場所に堆積し,微妙な高低差を作って自然堤防地帯を形成する.
上流部での土砂生産力が高く,下流への運搬力が大きければ,その河川が形成する扇状地や自然堤防は必然的に大きく (広く) なる.濃尾平野に流れ込む河川をくらべると,その規模や流域の地質が深くかかわって,木曽川が形成する扇状地と自然堤防が問題にならないほど大きい.木曽川扇状地はきれいな扇型をしているわけでなく,自然堤防地帯との境界も厳密に決められるわけではないが,犬山 (鵜沼) を扇の要 (扇頂) として径約12kmの広がりとされている.これに対して,長良川扇状地金華山の麓にある長良橋付近を扇頂として5kmほどの範囲を占めるにすぎない.長良橋付近の標高は約18m,柳ヶ瀬付近,岐阜駅付近ではそれぞれ約14m,約11mである.扇状地の上では長良川が周囲よりも高い所を流れる天井川をなし,両岸の斜面上に岐阜市の市街地がつつましく広がっていることになる.かつて県庁はこの扇状地のド真ん中に,岐阜大学の長良キャンパスは最も高い扇頂にそれぞれあった.現在,両者は扇状地を離れて自然堤防地帯に,しかもその中でも後背湿地と呼ばれる低地に移転した.移転にいたる経過はそれぞれにあったであろうが,自然立地条件としてはかなり悪くなったとみるべきであろう.そうしなければ広い土地が得られないほど,長良川扇状地はつつましい ( = 狭い) のである.つつましくなる理由もはっきりしている.

【関連項目】 地形[3] 東濃地方
地形[8] 長良川
地形[10] 長良川中流域

【キーワード】 木曽川扇状地,岐阜市街地,後背湿地,自然堤防地帯,扇状地,天井川,長良川扇状地,濃尾平野

【関連文献】
岐阜大学長良川研究会編 (1979) 長良川.三共科学選書9,三共出版,244P.

【余談】
岐阜の街を語る時,長良川は切り離せない存在である.長良川が街にフィットして流れていることによるのだそうだが,実は岐阜の街が長良川にフィットしているのが真相である.やはり長良川が先にあり,そこに後から来た人間が街を作っていった.おのずと長良川扇状地の立地条件に合うように作っていったことを忘れてはならない.

『学習テーマ』
小学5年「流水による土地の変化―川の働き


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