可児市

↑梅原地震断層のすがた

可児市
可児市西部における梅原地震断層の推定位置と変位確認地点
(1 / 5万地形図「美濃加茂」を使用)

木曽川より南では,可児市の土田と古瀬(こぜ)に変位が現れました.とりわけ後者はその南東方へ連なる活断層である華立(はなだて)断層 (貝塚ほか,1964) の延長上にあたり,その一部が変位した可能性もあります.

1. 坂祝町酒倉 (梅原24)

武藤・川畑(1933) は,濃尾地震による変位を調べるために水準測量を系統的に行い,ここでの測定点の間で82.52 cmの垂直ずれ (南西側隆起) があることを明らかにしました.ここが濃尾地震にともなう著しい変位の東端とされています.

2. 可児市土田 (梅原25)

土田の『南西にある大天神山が断層で鋭く切断され,その東側がやゝ低下した.その垂直に立った断層は木曽川河崖の絶壁でみられ』,『可児川の堤防沿いに土地が長さ約1600 mにわたって低下した』(小藤)とされています.

可児市古瀬の畑地地変
可児市古瀬の福田寺北西に現れた横ずれ
[Koto(1893)による図]

可児市古瀬の地変
可児市古瀬の福田寺付近の位置図
[太田(1968)に基づき,野村(1991)による]
A: 上の図の横ずれを起こした地点,B: 福田寺における地すべり地点,黄色部は地割れの地点

古瀬 / 福田寺
可児市古瀬の福田寺における地すべりの跡
(2002年12月撮影)
左図のB地点にあたります.現在では,地すべりの痕跡はまったく残っていませんが,寺への進入路にあたる上り坂の左壁部が左 (南) から右 (北) へ地すべりを起こしました.

3. 可児市古瀬 (梅原26)

福田寺の北西の田で北西~南東方向に現れ,その北側がやや低下し,1~1.2 m北西へ移動した』 (小藤) .福田寺付近では『稲田の凸起すること約6 mばかり』 (小藤) とされています.福田寺南側の墓地のある小丘に地すべりが生じ,頂部が深さ50 m,幅40 mで陥没し,北麓の福田寺は約5 m隆起したとされており,それらの状況は図示されています.
[文献]
貝塚爽平・木曽敏行・町田 貞・太田陽子・吉川虎雄(1964) 木曽川・矢作川流域の地形発達. 地理学評論,37,89–102.
武藤勝彦・川畑幸夫(1933) 濃尾震災地及び其他の地方に於ける検測水準測量の調査. 地震研究所彙報,11,315–328.
太田芳夫(1968) 濃尾地震の今昔について. 験震時報,34,145–149.