濃尾地震とともに現れた根尾谷断層のずれや割れ目は,雨などで流されたり,人間によって変えられたりして,時間がたつとともにその形がわからなくなっていきます。それでもまだ残されているものもありますから,そのようすを見ることにしましょう。
がけを横切る路は,左の写真のようにゆるやかな坂になっています。道路の両側にがけがみえますが,このがけもくずれたり,けずられたりして,道路のようになだらかな坂になってしまうと,地面がずれてできた場所であることがわからなくなってしまいます。
左の写真は,がけの部分を深く掘った穴の中のようすです。約6 mのがけの真下には,そのまま約6 mのずれがまっすぐに立った線 (矢印の間) を境にして残されています。この穴には屋根が付けられていますから,穴のかべがくずされていくことはありません。大地のずれをいつでも確かめられるようになっています。
上下のずれは,山の中ばかりでなく,平地にも現れました。左の写真では,水田の高さの違いとして1 mほどの段差がみられます。これも濃尾地震とともに現れた上下のずれを表わしています。このぐらいの段差は,みなさんの家のまわりでもみられと思います。ひょっとすると,それが大むかしの大地震とともにできた地面のずれを表わしているかもしれませんね。
少し変わった形で上下のずれが残されている例もあります。左の写真では,ヒノキの根が地面をはうようにななめ上へ向って伸びています。これは,木の根がまだ小さかったときに地面が根を横切って上下にずれましたが,根は切られずにもちあがったため,そのまま根が成長していってこのような形になったものです。
このヒノキは今でも残されていますが,その場所へはやぶの中をかきわけて行かなければなりませんので,残念ですが写真だけでがまんしてください。
左右のずれはいろいろな場所に残されています。左の写真は,道路が左右にずれて,とちゅうで折れまがっているようすです。この場所では水田のあぜ道も左右にずれましたが,水田を使うためには不便ですから,まっすぐに直されました。その時にこの道路の部分だけが直されずに残されたため,今でもこのように折れまがったままになっています。
左の写真は,濃尾地震のすぐあとに,ゆれ方がもっとも強かった根尾村でとられたものです。地震によって大地が強くゆれて,急な山の斜面が広くくずれているようすがわかります。同じ大地の変化でも,ずれや割れ目は大地にかかる強い力が原因でおこる変化ですが,がけくずれは地震のゆれが原因でおこる大地の変化です。