地球温暖化問題は,現在,人類が抱える環境問題の中でも最大のものだ。人類社会が快適な生活環境のもと持続的な繁栄を続けるには,未来の気候を展望することが不可欠だ。地球温暖化にともなう気候災害,水循環の変動による食糧危機,気温の上昇による生態系の変化などが,人間の生活や人命や財産,経済活動にマイナスの影響を与えるからである。
地球気候の変動要因の中で,人間活動による要因が,文明以前からの要因に比べ,無視できないほど大きくなる。人類は,気候技術を開発して変化をやわらげるか,ライフスタイルを変えて気候変化に適応するかのどちらかを選択しなければならない。いずれにしても人類は,持続的な繁栄のために,選択し行動しなければならない。
地球史上,地球の気候はさまざまな時間スケールで揺らいできた。この中には,地球表面全体が凍結する大氷河時代(スノーボール・アース; snowball Earth)から,地表にまったく氷床のない温暖期,さらに気候ジャンプ (寒冷な気候から温暖な気候への急激な変化) まである。最近でも,最終氷期 (12万–1万年前) には地表気温が激しく乱高下した。それらの時代に比べれば,人類の文明が発達した過去1万年間の気候がいかに安定で,快適だったかがわかる。ごく最近まで人々は,安定な気候状態を当然と見なしていた。しかし近い将来,気候の大変動時代が再来するだろうか。
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