過去1000年間の,気温異常の変動。
(Mann, M. E. and Bradley, R. S. Northern Hemisphere Temperatures …. Geophysical Research Letters. vol.26, 1999, p.759–762)
|
最も重要なデータとして,マンら (Mann et al.; 1998;1999) による,過去1000年間の世界各地の地表気温変動指標がある。そこには,明かに温度異常(temperature anomaly)がある (図)。
彼らは,樹木の年輪,湖成堆積物,縞状サンゴなど,多くの古気候指標を用いて過去の気候変動を復元した。そして,それらのデータを多変量解析して,気温変化の地域性をいくつかのパターンに分け,それらのパターンの強弱の経年変化として気温の変化指標を求めた。
その結果,最近100年間に地球全体で気温が上がっていた。
これまで, “地球が温暖化している” という主張へは,以下の反論があった :
- 古気候データが,樹木年輪など,気温の間接的(proxy)な指標を基にしている。
- 気候の変化は地域ごとに異なっており,ある地点の温暖化が示されても,地球全体が温暖化しているとは限らない。
- データの年数が短い。
しかし,マンらは,これらの反論を退けるため,より長い年数のデータを集め,地域差を考慮して解析した。それによって20世紀の温暖化が強く示された。20世紀の温暖化は,北極圏の気温変動の研究(Overpeck et al.;1997, Jones; 1998, Briffa et al.; 1998b)でも示されており,マンらの結果を裏づけている。
しかし,樹木年輪などは,過去の地表気温を間接的に記録しているにすぎない。地表気温をより直接的に記録しているものとして,地温勾配がある。ホワンら (Huang et al.; 2000) は,世界各地のボーリングコアの地温勾配を解析し,過去500年間の地表気温を求めた。結果は,やはり,過去150年間で平均0.6℃の上昇だった。
このように,最近の古気候の研究で,20世紀の温暖化傾向が明瞭になった。すでに地球温暖化は始まっているのだ。
|