古生代の終わりに,フズリナなどの海棲無脊椎動物が一斉に絶滅した。この事件は,古生代ペルム紀と中生代三畳紀の境界を特徴づけていて,ペルム紀(Permian)と三畳紀(Trias)の英語の頭文字をとって, 〝P/T境界〟 と呼ばれる。
その原因には多くの仮説がある。その1つに,シベリアに広く分布する洪水玄武岩の形成年代がP/T境界とほぼ一致することから, “大規模な火成活動による環境変化が大量絶滅の原因だ” という説がある。
地質学者たちは,ペルム紀後期から三畳紀初期の地層から産出する化石を詳しく調べ,どの生物種がいつ絶滅したかを調べている。その結果,大量絶滅は,P/T境界 (2億5100万年前) だけでなく,それより前,ペルム紀後期グアダルピア階の終わり (約2億5900万年前) にも大量絶滅が起こっていたことがわかたた。すなわち,P/T境界の大量絶滅は,2億5900万年前と2億5100万年前の,2つの事件の原因を究明する必要がある。
いっぽう,ペルム紀後期の生物絶滅事件が起こった時期に,中国南西部で大規模な火成活動があったという指摘がある。問題の火成岩・エメイシャン洪水玄武岩(Emeishan large igneous province)には,これまで精度の高い年代データがなかった。そこで,香港大学のチョウ(Zhou)らは,ジルコンという鉱物粒子を取り出してそのウラン‐鉛年代を測定し,2億5900万–2億5600万年前という年代を得た。この年代は,グアダルピア階の大量絶滅事件とよく対応している。チョウらは,中国南西部の大規模火成活動が大量絶滅の原因だと論じている。
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