ここでは濃尾地震で現れた地震断層群のすがたをみていくことにします.根尾谷地震断層系の長い運動の歴史に最新の運動が付け加わったことになりますが,大地の変化としてみるならば,そのすがたは1回の巨大地震で生じた大地の変化を理解する上で貴重な材料を提供してくれています.
濃尾地震とともに現れた地震断層は,根尾谷断層系のうち温見断層,黒津断層,根尾谷断層,梅原断層をたどるように現れました.それらは活断層と区別するために,下図のようにそれぞれ温見地震断層,黒津地震断層,根尾谷地震断層,梅原地震断層と呼びます.これらの地震断層は,それぞれに大地の変化を起こしましたが,現在でもその痕跡を明瞭に残している地震断層は根尾谷地震断層と梅原地震断層です.ここでは全体の概要を示した上で,これら2つの地震断層について具体的な変化のようすを別項で詳しく紹介します.
温見地震断層
温見地震断層は,濃尾地震断層系の最も北西端部に現れ,既存の温見断層に沿って福井県池田町野尻,旧美濃俣,大野市旧熊野河,旧温見において変位が記録されており,県境の温見峠付近までの福井県側で約25 kmにわたって変位が生じたと考えられています.
黒津地震断層
黒津地震断層は,既存の黒津断層に沿って北北西~南南東方向に生じたと考えられ,根尾村黒津付近において西側が隆起した左ずれの変位が観察されました.
根尾谷地震断層
根尾谷地震断層は,福井・岐阜県境の能郷白山 (標高1617 m) 付近から既存の根尾谷断層に沿って本巣町川内付近まで,ほぼ連続して約30 kmにわたり現れました.これらのようすは別に詳しく触れます.
梅原地震断層
梅原地震断層は,山県市生原の西方から既存の梅原断層沿いに山県市南部,岐阜市北東部を経て,関市柳洞付近までの約25 kmにわたってほぼ連続して現れました.それより東へは,坂祝町酒倉で木曽川へ達し,木曽川以東では孤立した場所での変位が報告されています.詳しくは別に触れます.