濃尾地震断層系のすがた

═濃尾地震とともに現れた地震断層群のすがた═

ここでは濃尾地震で現れた地震断層群のすがたをみていくことにします.根尾谷地震断層系の長い運動の歴史に最新の運動が付け加わったことになりますが,大地の変化としてみるならば,そのすがたは1回の巨大地震で生じた大地の変化を理解する上で貴重な材料を提供してくれています.
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濃尾地震断層系の概要

濃尾地震断層系概略図
濃尾地震断層系の全体図
[松田(1974)による図を簡略化]

濃尾地震とともに現れた地震断層は,根尾谷断層系のうち温見断層,黒津断層,根尾谷断層,梅原断層をたどるように現れました.それらは活断層と区別するために,下図のようにそれぞれ温見地震断層,黒津地震断層,根尾谷地震断層,梅原地震断層と呼びます.これらの地震断層は,それぞれに大地の変化を起こしましたが,現在でもその痕跡を明瞭に残している地震断層は根尾谷地震断層と梅原地震断層です.ここでは全体の概要を示した上で,これら2つの地震断層について具体的な変化のようすを別項で詳しく紹介します.

梅原全体図
温見地震断層の全体図
(1 / 20万地形図「岐阜」を使用)
黒太線部は温見断層

温見(ぬくみ)地震断層

温見地震断層は,濃尾地震断層系の最も北西端部に現れ,既存の温見断層に沿って福井県池田町野尻,旧美濃俣(みのまた),大野市熊野河(くまのこ),旧温見において変位が記録されており,県境の温見峠付近までの福井県側で約25 kmにわたって変位が生じたと考えられています.
⇒温見断層

黒津全体図
黒津地震断層の全体図
(1 / 5万地形図「能郷白山」を使用)
黒太線部は黒津断層

黒津(くろつ)地震断層

黒津地震断層は,既存の黒津断層に沿って北北西~南南東方向に生じたと考えられ,根尾村黒津付近において西側が隆起した左ずれの変位が観察されました.
⇒黒津断層

根尾谷全体図
根尾谷地震断層の全体図
(1 / 20万地形図「岐阜」を使用)
黒太線部は根尾谷断層.
枠内は個々の地域を示す図の範囲を表わしています.

根尾谷地震断層

根尾谷地震断層は,福井・岐阜県境の能郷白山(のうごはくさん) (標高1617 m) 付近から既存の根尾谷断層に沿って本巣(もとす)町川内(かわうち)付近まで,ほぼ連続して約30 kmにわたり現れました.これらのようすは別に詳しく触れます.
⇒根尾谷地震断層のすがた

梅原全体図
梅原地震断層の全体図
(1 / 20万地形図「岐阜」「美濃加茂」を使用)
枠内は個々の地域を示す図の範囲を表わしています.

梅原地震断層

梅原地震断層は,山県(やまがた)生原(いきはら)の西方から既存の梅原断層沿いに山県市南部,岐阜市北東部を経て,関市柳洞(やなぎぼら)付近までの約25 kmにわたってほぼ連続して現れました.それより東へは,坂祝(さかほぎ)酒倉(さかくら)で木曽川へ達し,木曽川以東では孤立した場所での変位が報告されています.詳しくは別に触れます.
⇒梅原地震断層のすがた
[文献]
松田時彦(1974) 1891年濃尾地震の地震断層. 地震研究所研究速報,13,85–126.