ここでは濃尾地震までに形成されていた活断層群のすがたをみていくことにします.その運動がいつ頃からはじまったのかはわかっていませんが,おそらく10万年ぐらい前までさかのぼるでしょう.いずれにしても,長い年月にわたって運動が繰り返され,それによって積み重ねられた大地の変化が根尾谷断層系のすがたになります.それに最新の運動が濃尾地震の時に付け加えられた結果を私たちは現在のすがたとして見ていることになります.
どの範囲までの活断層を根尾谷断層系とするかは人によって意見が異なりますが,ここでは濃尾地震断層系の地震断層をともなった下図の5つの活断層をとりあげます.ただし,大地の変化を理解するにはそれらすべてについて詳細に触れる必要はありませんので,概要を示した上で,別項で根尾谷断層と梅原断層について詳しく紹介します.
温見断層
断層は根尾谷断層系の最も北西部にあり,福井県池田町野尻付近から大野市南部,温見峠を経て,岐阜県根尾村の北部へと福井・岐阜県境の山間部を北西~南東方向に走り,全長約35 kmに及ぶ活断層です.断層地形が比較的多くの地点に残されており,とりわけ福井県側においては,断層線に沿ってみごとな差別浸食地形や系統的に左ずれの屈曲を示す累積変位地形がみられます.
黒津断層
黒津断層は,根尾村黒津付近の根尾川西谷川に沿って北北西~南南東方向に延び,根尾谷断層の東側に2 kmほど隔てて併走していますが,全長約6 kmの短い活断層です.黒津の北方で明瞭な鞍部地形や河谷の屈曲を形成し,根尾川西谷川やその支谷が直線的な流路を形成しています.
根尾谷断層
根尾谷断層は,福井・岐阜県境の能郷白山 (標高1617 m) 付近から,根尾村内をおおよそ根尾川に沿って南下し,町北部から岐阜市北端部へと全長約40 kmにわたって続く活断層です.活動度が高く,各所に差別浸食地形や累積変位地形を多く残しており,それらは別に詳しく触れます.
長滝断層
長滝断層は根尾谷断層の北東側を3~4 km離れて併走し,根尾村奥谷の南方から山県市長滝・掛付近までの約10 kmにわたって延びる活断層です.活断層としてはあまり明瞭な痕跡を残していませんが,濃尾地震の時に動いたことが最近になって指摘されています.
梅原断層
梅原断層は,根尾谷断層の南東部において,その北東側に約2 km隔てて雁行状に配列し,山県市南西部から東南東へ,岐阜市北東部,関市を経て,坂祝町へと続く全長約30 kmに及ぶ活断層です.断層の大部分が平地部を通過することもあり,明瞭な断層地形をほとんど示しません.詳しくは別に触れます.