〝岩石〟としてのストロマトライト

こんにちストロマトライトと呼ばれている岩石は、1825年に記載されました。
それから約半世紀たった1883年に、ホールJames Hall, 1811–1898, アメリカの古生物学者〕が、この岩石は石灰藻あるいは層孔虫の化石であるとして、クリプトゾーン(Cryptozoon proliferum)と名づけました。同様の構造はエオゾーン(Eozoon)などの化石として命名されました。しかし、これらの〝化石〟を作った生物はよくわからず、偽化石だと主張されたりもしました。
1906年、ベルギーのグリッチ(Gurich)は、縞状炭酸塩岩の岩石学的記載をして、後生動物であるスポンジオストロマ亜綱(Spongiostromidae; 仮に訳すなら〝海綿間質亜綱〟)の化石だと主張しました。しかしこの説は、野外地質学者たちには受け入れられませんでした。
Kalkowsky (1908)は、縞状炭酸塩岩をストロマトライトと名づけました。彼は、ストロマトライトは1枚ごとの層(ストロマトイド)が規則的に積み重なってできたもので、微生物がカルサイトを沈殿させることによって形成されたと考えました。いっぽう、淡水中に形成された縞状炭酸塩岩が、このころ記載されています。しかし、化石ストロマトライトとの関連性は注目されませんでした。
一方、アメリカ合衆国ではウォルコット(Walcott; 1914)が、原生代のコレニアやクリプトゾーンは、シアノバクテリアによって構築された化石であり、同様の構造物が淡水中で形成されていることを指摘しました。そして、ストロマトライトの形成環境は淡水の湖であると主張しました。
また、ムーア(Moore; 1918)は、ベルヒャー島の縞状鉄鉱床からシアノバクテリア様の化石を報告し、ストロマトライトがシアノバクテリアの構造物であると指摘しました。
Twenhofel (1919)は、これらのシアノバクテリアの構築した縞状炭酸塩岩をCoenoplaseと総称することを提案し、化石ストロマトライトの形成環境が浅海であることをそれらの産状から論じました。この頃には多くの地質学者がコレニアやクリプトゾーンを化石として認めるようになりました。