野外での認定条件

ストロマトライトを定義したら、次に、先カンブリア時代の地質体で産出する縞状堆積岩がストロマトライトであるかどうかをどのように判定するかが問題となります。
野外地質学者の間では、〝ストロマトライト〟を、縞状構造を呈するドーム状の堆積岩を野外での記載するときの用語として用いており、生物が関与して形成されたかどうかを詳細に検討していない場合があります。このため、先カンブリア時代の〝ストロマトライト〟の形成が生物が関与したかどうか、再検討が必要となっています。
このような状況を踏まえ、Buick et al. (1981)は、ストロマトライトの認定基準として、次のような項目を掲げています:
  1. 堆積岩であること
  2. 堆積時に形成された構造であること
  3. 上に凸の構造をもっていること
  4. ラミナは頂上付近でもっとも厚いこと
  5. 縞状構造を持つ場合、ラミナはスケールの異なる波状の褶曲構造を持つこと
  6. 微化石あるいは生痕が見られること、
  7. 微化石の種類の変化が形態の変化にともなっていること
  8. 微生物の分布が、砕屑粒子や沈殿した結晶が微生物によってトラップされたことを示唆していること。
これらの項目は、Krumbein (1983)の掲げたストロマトライトの認定記述とほぼ一致しています。
Buick et al. (1981)は、この項目に基づき、ストロマトライト様の縞状堆積物を、以下のように分類しています:
1.~8.を満たすもの
probable stromatolites(蓋然性ストロマトライト)
1.~7.を満たすもの
undoubted stromatolites(確実性ストロマトライト)
1.~5.を満たすもの
possible stromatolites(可能性ストロマトライト)
最近、Grotzinger and Rothman (1996)は、ストロマトライトが生物起源か無機的沈殿物かを形態から判定することが困難であることを指摘しました。それゆえ、ストロマトライトが生物起源であることを結論づけるためには、それらにともなってバクテリア様の化石が産出することが必要となります。
この条件を満たすストロマトライトのうち、最古のものは約27億年前のフォーテスキュー層群のものです。同時代のストロマトライトは世界各地でみつかっています。ですが、それ以前のものは、ストロマトライトとして記載されていても、生物が作った構造か否か詳細な検討が必要です。
文献
Buick, R. 1992. The antiquity of oxygenic photosynthesis: evidence from stromatolites in sulphate‐deficient Archaean lakes. Science, 255, 74–77.
Buick, R; Dunlop, JSR.; Groves, DI. 1981. Stromatolite recognition in ancient rocks: an apparaisal of irregularly laminated structures in an Early Archean chert‐barite unit from North Pole, Western Australia. Alcheringa, 5, 161–181.
Krumbein, WE. 1983. Stromatolites — the challenge of a term in space and time. Precambrian Research, 20, 493–531.