大陸の形成過程

地殻には,海洋地殻と大陸地殻がある。地殻とマントルの境界はモホ面と呼ばれ,地震波速度の不連続面になる。モホ面の深さ,つまり地殻の厚みは,大陸地域で30–50 km,海洋地殻では5 kmである。大陸地殻は花崗岩質だが,海洋地殻は玄武岩質である。海洋地殻は,中央海嶺で玄武岩質マグマが分化して生まれ,プレートの沈み込み帯でマントルに戻る。
いっぽう,大陸地殻の成長過程には2種類ある。日本列島のようなプレートの沈み込み境界で起こるものと,プレート内部で起こる大規模な溶岩の流れだしによって起こるものだ。
プレートの沈み込み帯では,海洋地殻の上に堆積した地層が海溝の陸側に付加する。西南日本の中古生層は,このようにして中生代に付加した。その後,西南日本では白亜紀から第三紀初期にかけて,花崗岩質マグマの貫入や,安山岩質や流紋岩質マグマを大量に流出する火山活動があった。このように,大陸は,海洋プレートの上の堆積物の付加と,シリカに富んだマグマの活動によって,徐々に成長してきた。 (シリカに富んだマグマは,沈み込んだ海洋地殻の再溶融や,プレートの沈み込みにより上部マントルに水が運び込まれて融解して形成される)
この大陸の成長は,日本列島などの島弧だけでなく,大陸と大陸が衝突するアルプス‐ヒマラヤ造山帯でも起こる。
一方,プレート内部での大規模な火山活動でも大陸は成長する。この火山活動は溶岩台地を形成し,広く地表を覆った溶岩は,大陸洪水玄武岩と呼ばれる。大陸洪水玄武岩としては,6500万年前のインドのデカン高原,南アフリカに分布しゴンドワナ大陸を分裂させ大西洋を拡大したカルー洪水玄武岩,2億5000万年前のシベリアや南西中国のものがある。洪水玄武岩の活動は,マントルにおけるプルーム活動による。短い期間に活発なプルーム活動があると,大陸地殻は急激に成長する。
地球の歴史をみると,急激な大陸成長は,約27億年前,約19億年前,8–5億年前に起こった。8–5億年前の大陸成長は,アフリカ大陸とその周りで起こったので,パン‐アフリカ造山運動と呼ばれる。この時の造山運動では,大陸地殻の衝突があちこちで起こった。アフリカ南部のダマラ造山帯[解説]も,パン‐アフリカ造山運動で生まれた。これらの造山帯では,海洋底の堆積層が造山運動に巻き込まれたり,マントル物質が融解してできたマグマが造山帯に貫入して,大陸地殻が成長する。また,中東ではこの時代にマントルから供給された玄武岩によって新しい地殻が生まれ,大陸を成長させた。
19億年前と27億年前の大陸成長では,火成活動が活発になり大陸地殻が大きく成長した。27億年前は,カナダ楯状地,西オーストラリアなどで大陸が成長した。また,19億年前は,いくつかの地塊が集まって北アメリカ大陸とバルト盾状地の原形が作られた。これらの地域では,島弧のような地殻が多く集まって大きな大陸に成長した。また,大陸成長の時代には,プルーム活動によってマントル物質が大規模に融解した。発生した玄武岩質マグマによって地殻が急成長し,玄武岩質地殻が再び融解して花崗岩質マグマができ,地殻の分化が進んだ。

© 2002 Gifu University, Shin‐Ichi Kawakami, Nao Egawa.