地震波トモグラフィー

地震波の到達時間や波形から,地球内部構造の画像を得る手法が, 〝地震波トモグラフィー〟 である。解析には,地震発生から地震波到達までの時間差 (走時) を用いる。走時は,震源から観測点までの地震波伝播経路に沿った地震波速度に反比例する。つまり,震源と観測点の距離を走時で割ると,平均速度が求められる。地震と観測点の組み合わせを多数用いると,場所による速度の違いを地図に描ける。
地震波トモグラフィーによる地球内部構造の研究の中には,特定地域の地殻や上部マントルの構造を対象とした研究と,マントル全体を対象とした研究がある。後者を特に, 〝マントル・トモグラフィー〟 と呼ぶ。
地震波トモグラフィーによる地球内部のイメージングによって,地震波速度や密度の不均質が明らかになった。地震波の遅い地域は高温で,マントルの上昇流がある。また,地震波の速い地域は冷たい表層物質の沈み込みが起こる。しかし,地球内部の不均質性が温度によるものなのか,温度だけでなく化学組成も異なるかは,議論が分かれている。岩石や鉱物の高温・高圧下における物性を地震学による研究結果と比較検討して,不均質の原因を明らかにするための研究がされている。

© 2002 Gifu University, Shin‐Ichi Kawakami, Nao Egawa.