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火山[22] 火山豆石
~付加物~

 
  
【豆知識】

火山噴出物には特定の形をしたものがある.例えば,紡錐形をした火山弾は,マグマがまだ可塑性をもった状態で空中に放たれ,飛行中に形を整えて固結したものである.もっと特徴的なものにはペレーの毛ペレーの涙がある.これらは繊維状あるいは球状の火山ガラスであり,粘性の低いマグマが爆発的に噴火して急冷固結すると形成される.これらの噴出物は,マグマが液体ないし半液体の状態で噴出し,噴出時に冷える過程で働く力の具合によって形づくられるものである.それでは火山灰のように固体状態で噴出するものにも特定の形をつくる機会はあるのであろうか.
火山豆石と呼ばれる噴出物がある.これは球状に固まった火山灰であり,ちょうど大豆や小豆のような大きさの固まりである.同心構造をもち,中心に結晶片などの核をもつものや表皮に細粒の殻をもつものもある.火山灰を上塗りしていくように集めて形成されていったものであるが,その過程にはいろいろな場面が想定されている.噴煙の中で火山灰が水滴に表面張力で凝集してできるものや,すでに堆積した火山灰の上に雨滴などが落ち,それが斜面を転がってできるものなどがある.多くが降下火山灰層に含まれることから,空中で水滴のある状態で形成され,それが落下してきたと考える場合が多いが,火砕流堆積物の中にも発見されることがあり,条件さえ整えばどのような噴火形態でも形成される.実際の火山豆石は,どちらかというと玄武岩質よりは流紋岩質の火山灰中で見られることが多く,岐阜県下では濃飛流紋岩の中で溶結凝灰岩層の間に挟まれる非溶結の火砕岩層にしばしば含まれる.そうした火山灰層は何枚にもわたり重なって堆積していることから,小規模な火山活動が繰り返し起こり,その噴煙柱内で火山豆石がその都度つくられて,それらを含む火山灰が湖に静かに降り注いで堆積したものと考えられている.

【関連項目】 岩石・鉱物[4] 濃飛流紋岩
火山[9] 火山灰の正体

【キーワード】 火山弾,火山豆石,降下火山灰層,濃飛流紋岩,ペレーの毛,ペレーの涙

【関連文献】
鹿野勘次 (1978) 岐阜県中津川市北部地域の濃飛流紋岩と火山豆石.地球科学,32,225–235.

【余談】
火山はいろいろなものを作り出す.本質的には激しい状態変化をともなう現象であるから起こることではあるが,火山豆石のように地表へ出てからも小細工をしてさらに付加価値をつけてくれる.火山豆石を英語ではaccretionary lapilliという.lapilliは火山礫 (径2~64mm) の意味であり,accretionaryは付加、添加といった意味である.やはり付加価値があるのである.

『学習テーマ』
中学1年「大地の変化 (火山と火成岩) ―火山噴出物


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