35億年前の硫酸還元菌
ウェスタン・オーストラリアのピルバラ地域には、世界最古(34.7億年前)の硫酸塩岩(重晶石)の鉱床がある。最近、デンマークのY. Shenらは、重晶石の硫黄同位体比を測定し直すと同時に、重晶石に含まれる微小な硫化物の硫黄同位体比を測定し、硫酸塩と硫化物の同位体分別の大きさから、当時硫酸還元菌の活動があったかを検討している。
試料は、ノース・ポール地域に露出するワラウーナ(Warrawoona)層群のドレッサー(Dresser)累層から採集された。硫化物は重晶石を含む縞状の岩石中で、厚さ2~10 mmのラミナ状に含まれている。従来測定されている硫化物の大きさ粒子の硫黄同位体比は平均-0.9‰~-2.4‰で、重晶石の硫黄同位体比との差は小さい。ところが、今回測定した微小な硫化物粒子の硫黄同位体比は、-17から-2‰までの値をとっており、重晶石の硫黄同位体比との差は、平均で11.6‰、最大で21.1‰に達する。このことから、Shen et al. (2001)は、34.7億年前にすでに硫酸還元菌が出現していたと論じている。
一方、今回得られた硫酸還元菌の出現時期を、微生物の分子系統樹に照らし合わせ、分岐年代の見積もりを試みている。
文献
Shen, Y; Buick, R; Canfield, DE. 2001. Isotopic evidence for microbial sulphate reduction in the early Archaean era. Nature, 410, 77–81. [abstract] [abstract (日本語)]