古海水の硫黄同位体比
最古の蒸発岩
Lambert et al. (1978)は、ウェスタン・オーストラリア、ピルバラ、ノース・ポール地域と南アフリカ、バーバートンの重晶石(BaSO4)の硫黄同位体比を測定している。
ノース・ポール地域の重晶石(34.5億年前)は、チャートと重晶石の互層であり、最古のストロマトライトとしても報告されている。重晶石の層には、石膏(CaSO4)の結晶構造の名残りが認められる部分があり、堆積時には石膏だったが、後の時代に重晶石に置き換わったと解釈されている。
南アフリカの重晶石は、オンバ‐ワハット層群(34.5億年前)とフィグ・トリー層群(32億年前)で発見されている。オンバーワハット層群では、最上位のチャート層に挟まれている。フィグ・トリー層群の重晶石はチャートとシルトの互層に挟まれている。
硫黄同位体比の測定データは、それぞれ3.6‰、3.8‰であり、原生代以降の蒸発岩の硫黄同位体比(>10‰)と大きく異なっている。海水と石膏の間の硫黄同位体分別量はおよそ2‰であり、これらの重晶石の硫黄には、硫酸還元バクテリアの分別の痕跡は刻まれておらず、マントル由来の硫黄とほぼ同じ同位体比をもっているものと考えられる。
ちなみに、ノース・ポール地域の硫化物の硫黄同位体比は、-0.9‰であり、硫酸と硫化水素の同位体比の差は4.5‰に過ぎない。
文献
Lambert, IB; Donnelly, TH; Dunlop, JSR; Groves DI. 1978. Stable isotopic compositions of early Archaean sulphate deposits of probable evapolitic and volcanogenic origins. Nature, 276, 808–811.