硫黄同位体比と地球史

硫黄は、原子番号16で原子核に陽子が16個存在する。硫黄の同位体には、中性子数が16、17、18、20のものが自然界に存在する。その存在度の比は32S ∶ 33S ∶ 34S ∶ 36S = 95.02 ∶ 0.75 ∶ 4.21 ∶ 0.02である。
自然界に多いのは32Sと34Sなので、硫黄同位体比というと32S ∕ 34Sを測定する。硫黄同位体比は、標準試料からの比偏差を千分率(‰)で表すことが多い。標準試料には、キャニオン・ダイアブロ隕石中のトロイライトが使われる。
硫黄同位体比と地質年代の関係Thode.  1953.ズーム
硫黄同位体比と地質年代の関係
Thode. 1953
1940年代ころには、硫黄同位体比の変動を引き起こす主要な原因が硫酸還元バクテリアの硫酸還元反応であることが知られていた。
1953年カナダ・マクマスター大学のH.G.ソードらは、地質時代に形成された蒸発岩中の硫酸鉱物と堆積岩中の硫化鉱物の硫黄同位体比を測定して、地質年代との関係を図示した。
還元的な硫化水素は無機的な酸化あるいは硫黄酸化細菌による酸化によって硫酸になる一方、硫酸は硫酸還元バクテリアによって還元されて硫化水素になる。地球表層ではこの2つの反応によって硫黄の地球化学サイクルが成立している。硫黄同位体分別を引き起こす要因は硫酸還元バクテリアの硫酸還元反応であることから、ソードらは、7~8億年前に硫酸還元バクテリアが出現した。現在では、硫酸還元バクテリアの出現は少なくとも20億年以上前までさかのぼると考えられている。