炭酸塩岩の同位体比異常
1980年代なかばになると、炭酸塩岩の炭素同位体比の負の異常も新たな謎として登場した。
ハーバード大学のノル(A.H. Knoll)らは、スバールバルなど北欧地域の原生代の炭酸塩岩の層序学的研究をしていた。彼らは、海水の炭素同位体比やSr同位体比に永年変化があり、岩相による層序と組み合わせることで遠く離れた地層の対比ができることを発見した。
彼らの得たデータには、氷河堆積物にともなう炭酸塩岩の炭素同位体比が-5‰に達するスパイク状の負の異常が認められた。炭素同位体比の負の異常は5回起こっており、彼らは原生代に5回氷河期が訪れたと解釈した(Kaufman et al., 1997)。この発見は、氷河期にともなって海洋循環が変動したか、生物圏の変動を含めて炭素循環様式が大きく変化したことを示唆していた。図2は、海水炭素同位体比の変遷の復元である。
文献
Kaufman, AJ; Knoll, AH; Narbonne, GM. 1997. Isotopes, ice ages, and terminal Proterozoic earth history. Proceedings of the National Academy of Science, 95, 6600–6605.