第四紀の氷期‐間氷期サイクルと海洋循環

川上紳一.  縞々学—リズムから地球史に迫る.  1995.ズーム
川上紳一. 1995 縞々学—リズムから地球史に迫る.
現在の地球の海では、北大西洋で表層の塩分濃度が増加して重くなった海水が深海底へと沈み込んでいる。この深層海水は大西洋を南下し、インド洋を巡って北太平洋で沸き出している。その反流として表層海水は太平洋からインド洋を流れ、大西洋を北上する。このような海水の大規模な循環は深層水循環と呼ばれる。
川上紳一.  縞々学—リズムから地球史に迫る.  1995.ズーム
川上紳一. 1995 縞々学—リズムから地球史に迫る.
表層海水ではプランクトンによって有機物が合成されている。プランクトンは魚の餌になり、糞として海中を沈降していき、深部で酸化分解される。したがって、表層海水では軽い炭素が乏しくなり、深層海水では有機物由来の炭素が供給されるため、深さの違う海水を採集して炭素同位体比を測定すると、成層構造していることがわかる。
海底に堆積した堆積物コアを採集して、含まれる有孔虫遺骸などの炭素同位体比が測定されている。得られたデータは有孔虫が生息していた海水の炭素同位体比を反映している。それらの炭素同位体比分析から最終氷期の最盛期(Last Glacia Maximum)における海洋の成層構造が復元された。
得られた値をみると、氷期には現在のようには海洋循環が活発でなかったことが示唆されている。図は、大西洋の南北断面をとって、現在と最終氷期の海水の炭素同位体比の分布である。現在では、北大西洋から沈み込んだ深層水が大西洋の中央から南部にかけてまで影響しており、冠南極海から沈み込んだ海水がその下に入り込んでいるが、最終氷期には、北大西洋からの沈み込みは弱まっている。
このような氷期‐間氷期の変動で、深層海水の変動があったかが、対応して海水のpHも変化しており、炭酸塩岩の融解と沈殿が繰り返したことが示唆されている。
グロッチンガーらは、こうした氷期と間氷期のサイクルと同様の機構で、ひときわ大きな変動が炭素同位体比の負の値や氷期の直後の炭酸塩岩の堆積があったと主張している。